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メンテナンス


修理・調整のご依頼につきましては、当店に直接お持ち込みいただくことが一番良いのですが、遠方等でご来店が難しい場合も対象楽器をご郵送いただき御見積させていただくことも可能ですので、ご遠慮なくお問い合わせください。 お問い合わせemail→ info@pietraponte.com


修理事例紹介


  1、全面レストア

 2、ネック突板補修 

 3、指板交換

 4、フレット交換

 5、ヘッド裏 貝飾り製作

 6、響板クラック修理

 7、ブリッジの製作

 8、フレット溝切ゲージ

 9、指板の接着


※画面をスクロールして事例をご確認ください



 マンドリン族の楽器は木材でできているので、金属弦の強い
テンションの影響下、温湿度等の環境変化にさらされていおりま
す。また、フレットが減ってくるなど音への影響も出てきます。人が
健康診断を受診しているように、楽器も年に1回は健康状態を診
断し、必要があれば適切なメンテナンスを行った方が、良い状態
をより長く維持できますので、是非楽器の状態の診断にお持ちく
ださい。どなたにでもわかりやすいよう、使用者の立場に立ってチ
ェックリストを作成いたします。また、調整または修理が必要な場
合は、修理方針などをお客様とお打ち合わせさせていただきなが
ら対応させていただきます。お気軽におたずねください。

■ 簡単な調整から全面修理まで、楽器の状態を診断し、お客様
のご希望を伺い修理方針を合意させていただきます。

■ 塗装については、原則製作当初のものを使用します。シェラッ
ク、ラッカー、カシュー、オイルステイン 等

■ 接着については、できるだけ膠を使用します。膠は収縮率が
大きく木材をしっかり接合でき、また、水分と熱で剥すことが容易
にできる優れものです。ヴァイオリンの名器ストラディバリが瞬間
接着剤で修理されていたらちょっと引いてしまうと思いますね。私
はできるだけオリジナルの材料や方法で修理することに心がけて
います。

■ ブリッジについては、お客様が使っている弦に合わせてオクタ
ーブピッチを調整いたします。なお、新規に製作する場合は、でき
るだけオリジナルの形状に合わせるようにしています。

■ 指板については、オリジナルと異なり改造と指摘されるかもし
れませんが、弾けない曲もおるため24フレット以上にしています。
(Vinaaciaなど1800年代の楽器はサウンドホールの手前で指板が
終わっているものが多くみられますが、後期のVinacciaは24フレッ
ト以上のものが主流になりました)

■ 楽器の改造については、お客様のご要望に合わせて対応しま
すが、製作者の思いもあると思いますのであまりお勧めしません。
ヨーロッパの工房では、「修理=元に戻す」が原則のようです。以
前ベルギーのクルトデコルテ氏に修理を依頼したとき、25フレット
を29フレットにしてほしいと要望しておりましたが、1年後、戻った
楽器は25フレットのままでした。


◆ 修理の方法考え方についてはあくまでも私がとっている方法
ですので、異なる考え方や方法の方もおられます。修理結果に関
して行き違いがないよう、お客様と方針について合意したのちに
着手させていただいております。

修理事例紹介


1、全面レストア Giuseppe Vinaccia fu Gaetano Anno.1905 .

◆状態:かなり良くありませんでした
  ・響板が変形していて欠損している木部が石膏のようなもので埋められていました。
  ・ヘッド及びネックの突板が剥がれ欠落していました。
  ・ブリッジも割れて使えない状態でした。
   ・剥がれている部分は白い接着がべっとりついていました。
  ・鼈甲のピックガードはバリバリに割れていました。
◆修理内容:
  ・響板及び力木を外し、響板の変形の修正して力木を製作貼り付けました。
  ・木材が欠損しているところは同種類の木を切り出して接着しました。
  ・ピックガードはエボニーの板で製作して響板に貼り付けました。
  ・ネック・ヘッド周りの突板を剥して、同材質の突板を切り出して接着しました。
  ・指板は、現代の曲も演奏できるように指板を延長しました。(改造)
  ・アームガードはついていなかったので、製作いたしました(改造)
  ・ブリッジは破損していて元の形がわからないため、一般的なVinacchaを採用しました。
  ・塗装はシェラックをフレンチポリッシュで仕上げました。






2、ネック突板補修 オールドマンドラ
◆ネックの突板が部分的にはがれいるので補修いたしました。
◆剥がれている部分の周りを四角く取り除いて、そこに新しい突板を貼りつけました。楽器全体がオイルステインで塗装(非常に薄い)されていたため、汗が木部にしみこみ接着剤がノリ状にベトベトになっていて他の部分もはがれる可能性があるので、接着剤をアイロンで硬化させてネック全体をシェラックで塗装しました。 部分補修であれば、費用もリーズナブルです。

3、指板交換 Raffael Calace No.16bis 

◆ネックが反って弾きにくいのと、フレット及び指板がボロボロになっているので、全体の調整及び指板の交換をしてほしいとの依頼です。
◆指板を剥してネックの上面を平滑に。エボニー材から指板を切り出し、カンナで厚さを整えました。できた指板をネックに貼り付け、表面をカンナとペーパーで平滑にして、フレットの位置を卦がきます。鋸でフレットの溝を切り同じ寸法に加工した白蝶貝のポジションマークを指板に接着してフレットを打ち込みすり合わせします。最後にラッカーで塗装を補修して完成です。ついでに塗装が傷んでいるところも補修いたしました。





4、フレット交換 落合マンドリンS-1

◆購入した時からメンテナンスしたことがないということでお持ちになりました。
◆10フレットより低音部分のフレット、指板がかなり減っていて音もつまり気味だったので、フレット交換することにしました。ただし、すべて交換するのではなく減っている11フレットまでを交換し、それより上はそのまま使うことにしました。フレットを抜いて指板表面を平滑にしフレットを打ち込みます。その後、フレットのすり合わせ、塗装の補修、ブリッジ、ナットの調整を行い完成です。(完成した写真を撮り忘れました)

5、ヘッド裏 貝飾り製作 Vinacciaマンドリン ヘッド裏 貝飾り製作

◆ヘッドの裏側にある貝の飾りが欠損していたるため、白蝶貝を加工して接着しました。
◆欠損部の形状に合わせて樹脂板で型を取り、それを基に貝に罫書し糸鋸で切断、角を丸くサンディングして磨き、接着して完成です。貝の接着は膠だとはがれ易いため、タイトボンドを使用しました。


6、響板クラック修理 落合マンドリン M-4

◆購入依頼調整したことがないということでのお持ち込みです。観察するとTOPにクラックが入っていました。お客様は全く気付いれおられませんでした。今年も結構乾燥しているので、指板の両サイドにフレットがはみ出してバリのようになっていたら指板が収縮しているので、乾燥しすぎている可能性があります。
◆クラックは接着だけではぴったり閉じそうにないため、溝を少し広げて松の板をお目込み膠で接着します。表面を平滑にしたらカシューを使って塗装を補修します。部分塗装の場合、100点の色合わせは難しいです。その他フレットのすり合わせなどを行い完成です。


7、ブリッジの製作

◆エボニーの板からブリッジの大きさに合わせて切り出し、牛骨を取り付ける溝をノミを使用して加工します。次に、できた溝に牛骨をクランプして接着し、しっかり付いたらペーパーを使用して表面を平滑にして、ブリッジの形状を罫書します。これで下ごしらえは完了です。ブリッジの形を整える手始めにブリッジテイメント響板の形状を合わせます。一般的に響板は真ん中が高くなっているので、ブリッジの底面も響板にかかる応力ができるだけ均等に分散するよう、それにぴったり合わせる必要があります。まずはRとり用のカンナで底面を粗削りし、響板の形状に概ね合わせます。次にブリッジ全体の形状に鋸、カンナ、やすりを使って整えます。大体の形状になったら底面を隙間ゲージやスクレーパーを使って仕上げます。この時、響板にペーパーを敷いてそのうえでブリッジの底面をすり合わせる一般的な方法をとることもあります。ここで私のこだわりですが、木は削ってしまうと元に戻せないので響板は変形していてもできるだけ削らず、根気がいりますが、ブリッジの底面を成形することで面合わせするようにしています。最後にオクターブピッチを確認しながら弦毎の弦長を調整し、全体を仕上げて完成です。


8、フレット溝切ゲージ

◆以前は、指板をネックに接着してからフレットの溝を切っていましたが、非常に根気がいる作業であることと、厳密に言うとピッチ及び平行にばらつきがでます。これを修正することが大変でした。ネットなどで調べていたところテーブルソーを使って容易にばらつきなく加工できる方法があることを知り、やってみることにしました。必要なものは、テーブルソー、丸鋸、集塵機です。テーブルソーは市販の物を改造、丸鋸は一般のフレット用は市販のもの、板フレット用は指定の外形、幅で特注、ゲージも1mmピッチで330〜333mmを設計し特注しました。これのおかげで、生産性、品質が格段に向上しました。
◆ゲージは予備に1セット(マンドリン、マンドラ、セロ)を用意しましたので、有償ですがお譲りすることができます。必要な方は、お問い合わせください。


9、指板の接着 D'Isanto 1900

◆ついていた指板を剥したら残った膠や汚れを取り除き、平面が出ているかスケールでチェックします。この楽器はサウンドホールの手前が少し低くなっていたので、スプルースの板を接着してカンナを使って平面を出します。あとロングフレット部分の補強材を接着して下準備完了です。
◆指板の接着は膠を使います。湯煎して液状になった膠を指板とネックに塗布し貼り付け、クランプで固定します。一昼夜固定して、翌日ポジションマークを取り付けて完了です。次にフレットの打ち込みに移ります。(膠の湯煎はリサイクルショップで購入したIHヒーターを使っています)